FXデイリー分析レポート 2025年9月3日
1. 分析対象
- 通貨ペア: XAUUSD, USDJPY, GBPUSD, AUDJPY, EURUSD
- 株価指数: NASDAQ, Nikkei225, DAX
- 商品: USOIL (WTI原油)
- 暗号資産: BTCUSD
対象期間: 東京時間 2025年9月2日 午前6時 ~ 2025年9月3日 午前6時
2. 昨日の市場サマリー(欧州・米国市場)
昨日の市場は、英国の財政懸念をきっかけとしたポンドの急落が全体のセンチメントを支配しました。米国市場がレーバーデーの祝日で休場だったため、薄商いの中でポンド売りが加速し、その影響が他通貨にも波及する展開となりました。
a. 主要経済指標の結果
欧州で消費者物価指数と米国は製造関係の指標があったもののそれが原因で大きく市場が動くことはありませんでした。
国 | 指標名 | 結果 | 市場予想 | 影響 |
---|---|---|---|---|
🇯🇵 | マネタリーベース (8月) | 前年比-4.1% | – | 影響は限定的 |
b. 要人発言・金融政策
- FRB(米連邦準備制度理事会):主要な発言はありませんでした。
- ECB(欧州中央銀行): シュナーベル専務理事が「これ以上の利下げをする理由は見当たらない」と発言し、利下げ打ち止めを示唆した一方で、リトアニア中銀総裁は「10月に利下げが議論される可能性」に言及。やや見解が分かれており、ユーロの上値を重くする一因となりました。
- BOE(イングランド銀行): 直接的な金融政策の発表はありませんでしたが、後述の通り市場では英国の財政状況に対する懸念が強まっています。
- 日銀: 氷見野副総裁が「引き続き政策金利を引き上げていくことが適当」と、改めて追加利上げに前向きな姿勢を示しました。円を支える要因ですが、ドル高の流れに押されています。
c. 地政学リスク・その他特記事項
- ポンド急落: 昨日の市場の最大の注目点です。ロンドン市場において、英国の財政健全化の遅れに対する強い懸念が浮上。これを嫌気して英国の長期金利(ギルト債利回り)が急騰し、英国債とポンドが同時に売られる展開となりました。特にGBPUSDは一時的に大きく値を下げ、市場全体のリスクオフムードを強めました。英国は最近特に治安も悪化しているとの情報も多い。
- 全般的なドル買い: ポンド急落を受けて、リスク回避の動きと、相対的に米国の経済状況が評価され、全般的なドル買いが優勢となりました。ドル円は一時148円台後半まで上昇しました。
3. 各通貨ペアの分析と本日の注目点
XAUUSD (ゴールド)
- 昨日の値動き: ドル高と世界的な金利上昇が重しとなり、上値の重い展開でした。ポンド急落に伴うリスク回避の動きから一時的に買われる場面もありましたが、ドル高の流れに押され、方向感に欠ける動きとなりました。
- 本日の注目点: 本日発表される米国のJOLTS求人件数が注目されます。労働市場の力強さが示されれば、さらなるドル高・金利高につながり、ゴールドの売り圧力となる可能性があります。$3,300のサポートラインを維持できるかが焦点です。
USDJPY (ドル円)
- 昨日の値動き: ポンド安・ドル高の流れに乗り、一時148円台後半まで上昇しました。日銀の氷見野副総裁によるタカ派的な発言が円を支えましたが、ドル買いの勢いが勝りました。
- 本日の注目点: 米国のJOLTS求人件数やベージュブックが注目材料です。強い結果が出れば149円台を試す展開も考えられます。一方で、日本の通貨当局からの円安牽制発言にも注意が必要です。
- アノマリー: 本日は3日で、5日周期のドル買いアノマリー(ゴトー日)には該当しません。
GBPUSD (ポンドドル)
- 昨日の値動き: 英国の財政懸念から急落。市場の信頼が揺らいでおり、ポンドは主要通貨に対して全面安となりました。下落後はやや値を戻したものの、依然として不安定な状況です。
- 本日の注目点: 英国のサービス業PMI(確報値)が発表されます。予想より弱い結果となれば、景気後退懸念と相まって再びポンド売りが強まる可能性があります。財政に関するヘッドラインにも引き続き警戒が必要です。
AUDJPY (豪ドル円)
- 昨日の値動き: 全体的なリスクオフムードと円買い(対クロス円)の動きに押され、軟調な展開でした。
- 本日の注目点: 日本時間午前に発表されるオーストラリアの第2四半期GDPが最大の注目材料です。結果次第で豪ドルの方向性が決まる可能性があります。市場予想を上回れば買い戻し、下回れば下落が加速するでしょう。
EURUSD (ユーロドル)
- 昨日の値動き: ポンド安につられる形で下落し、ドル高が進行しました。ECB内の見解の相違もユーロの上値を抑える要因となっています。
- 本日の注目点: ユーロ圏のサービス業PMI(確報値)と生産者物価指数(PPI)が発表されます。特にサービス業PMIがインフレ圧力の持続を示すかどうかに注目です。基本的にはドル主導の展開が続くと予想されます。
NASDAQ / Nikkei225 / DAX (株価指数)
- 昨日の値動き: 米国市場が休場だったため、NASDAQはCME先物が時間外で軟調に推移。欧州(DAX)は底堅く推移しましたが、日経平均(Nikkei225)は反発して引けました。
- 本日の注目点: 休場明けの米国市場の動向が注目されます。長期金利の上昇はハイテク株(NASDAQ)の重しとなりやすいです。米JOLTSの結果を受けた金利の動きが、本日の世界的な株価の方向性を左右するでしょう。
BTCUSD (ビットコイン)
- 昨日の値動き: リスクオフムードが広がる中、上値の重い展開が続きました。株式市場との相関性が高く、金利上昇局面では売られやすい傾向があります。
- 本日の注目点: 米国株、特にNASDAQの動きに連動する展開が予想されます。ドル高もBTCの上値を抑える要因であり、明確な買い材料に欠ける状況です。
USOIL (WTI原油)
- 昨日の値動き: ドル高が進行したことが上値を抑える要因となり、やや軟調に推移しました。
- 本日の注目点: 米国の経済指標に加え、今夜発表される米週間石油在庫統計が注目されます。在庫の減少が確認されれば、需給の引き締まりが意識され、価格を下支えする可能性があります。
4. 総括・本日の市場センチメント
全体的なリスクセンチメント: ややリスクオフ
英国の財政懸念という新たなリスク要因が浮上し、市場の不透明感が高まっています。昨日のポンド急落は、薄商いの中で一気にセンチメントを悪化させました。
本日の戦略のヒント:
- ドル高の流れが継続するかが焦点です。本日の米JOLTS求人件数が強い内容であれば、この流れは継続する可能性が高いでしょう。
- ポンドの動向には引き続き注意が必要です。 昨日の急落からの自律反発が続くか、あるいは戻り売りに押されるかを見極める必要があります。関連ニュースには敏感に反応しましょう。
- 月初には先月末のロンドンフィキシングの影響が出ることもありますので夜中の急騰急落に注意